長谷川桜子のアロマ&ハーブストーリー

アロマセラピー店主A子さんとハーブの出会い

東京都内でアロマセラピーの店を開いているA子さん(30)とハーブとの出会いについて、エピソードを紹介します。

香りで安らぎ、快適な夢

「夢を見ていました。一面の緑の野原、澄んだ青い空-。寝転んで新鮮な空気を胸いっぱいに吸うと、気分が晴れ晴れとします。起き上がって歩こうとしたら、転んで目が覚めました。自宅のベッドにいました。洗面所で子どもたちの声がします。いつもの朝が始まりましたが、今日の気分は違います。久しぶりに熟睡して気持ちがすっきりとしていました。夢のせいなんでしょうか。でも、なぜ夢を見たのでしょう……。」

東京都内でアロマセラピーの店を開いているA子さん(30)が、ハーブの不思議さを感じたのは十年前のそんな朝のことでした。

A子さんは当時、都内のCATV局に頼まれ、ユニークな店や場所を地元の主婦が紹介する番組の制作を手伝っていました。夢を見る前日でした。A子さんは、その番組の取材で訪れた喫茶店で、一杯のハーブティーを飲みました。

ミントとバラの優しい香りが胸を伝わって、すうっと胃に下りてくるのがわかりました。夢の風景は、その時の感覚と似ていました。

熟睡できたのは、ハーブティーのせいでは!

「熟睡してスッキリできたらのは、もしかしたら、あのハーブティーのせいでは」。子どもたちを学校に送り出し、食卓で考えていて思い付きました。「薬草のようなもの」という程度だったハーブへの認識が、この時から変わりました。

たばこの煙で?慢性気管支炎に

独身のころ、A子さんは議員秘書を務めていました。電話の応対や接客に追われ、気の抜けない日々を送りました。

最も悩まされたのが、たばこの煙でした。秘書の机は、五人も集まれば満員になる小さな待合室にありました。年末の予算編成などで地元から陳情団が集中する時期には、日に五、六十人が訪れます。

そんな時は、客が一時間以上も待たされることも珍しくありません。手持ち無さたに、客は次々とたばこに火をつけます。来客者全員が吸い始めた時、待合室は煙幕を張ったようになりました。

煙から逃げたくても、むやみに席は離れられません。帰宅して着替えると、においが服に染みついています。すぐに髪を洗いました。

鎮痛剤が手放せなくなる

ある日、せきが止まらなくなり、熱が出ました。病院に行くと、慢性気管支炎と診断されました。結婚して秘書の仕事を辞めても、体調は戻りません。微熱が続き、頭痛に悩まされ、いろいろな病院に通ってみても治りません。いつしか鎮痛剤を放せなくなっていました。

目的別に50種も

ハーブティーを飲んで夢を見たのは、そんな時でした。ハーブの成分に含まれている「香り」が体や心に影響を与えている、といいます。本を買い込み、都内で開かれている勉強会に参加してみました。

一口にハーブと言うが、50種類以上もあります。エキスを抽出したオイルを買って、ふろの湯に入れてみたり、専用のポットに入れて蒸発させて出る香りを試したりしました。

「こんなもので本当に治るのだろうか」。半信半疑で始めた勉強でしたが、ハーブの世界は知れば知るほど不思議でした。気分を和らげてくれたり、疲れた心をいやしてくれたり、種類によって効果が違います。いつしか、A子さんは主婦の趣味を超えるほどの知識と経験を蓄えていました。

ハーブの店を開業

へそくりをためた資金を元手に昨年一月、ハーブの店を出しました。長男が集中して受験勉強ができるよう利用してみたいという主婦、リストラによる環境の変化で倒れそうになった会社員……。店には、「いやされたい人たち」が集まってきます。

A子さんが勧めるハーブは、活力の必要な朝は強壮作用のある「ローズマリー」、静かに眠りたい夜は鎮静作用を持つ「ラベンダー」。乾燥させたハーブを、お茶にして飲むだけではなく、数滴のハーブオイルを首筋に塗ることもあります。

せきやのどの痛みに「ティートリー」

殺菌作用のある「ティートリー」というハーブのオイルは水で薄め、うがいをすると、せきやのどの痛むときに飲むといいそうです。

「お母さんが外出前の子どもの服に一滴のハーブオイルを染み込ませておくだけで、子どもの気分も違ってくるものです」とA子さん。

「究極のハーブ」を探して・・

あの時の夢の続きを見たくて、A子さんは、寝る前にいろいろな種類のハーブを試してみました。でも、素晴らしい夢を見させてくれる“究極のハーブ”には、まだ出合っていない、といいます。